他界したとき、そしてドメイン名
何度か周囲で技術方面で亡くなられた方の話を聞くにつけ、この時代に様々なアカウントを残したままに倒れられた時、家族は一体どうするのだろう、と考える事が増えまして、少し書き残して置こうと思います。自分の身にもふりかかりますから。
家族として何が最も気になるかといえば、きっと今ならその方の携帯電話でしょう。様々な人から電話がかかってくるかもしれません。この時代、一人一台の電話をもつようになりましたから、家の電話にはきっとかかってきません。次は携帯メール、PCメール、様々な端末に散りばめられた様々なアカウント。Facebookでだけつながった友達、Twitterだけでつながっていた友達、いろいろな集合体の中で重複していることもあればそうではない関係の方もいるでしょう。
家族はやはり、関係する方たちに連絡を取りたいと考えるでしょうが、連絡先を知ることはできるでしょうか。紙の手帳なら開けば良いのですが、スマホでロックがかかっているとなると、それは随分難航しそうな作業に思えます。死ぬことを想定してロックかけなければいいんでしょうか。いやいやそんな馬鹿な。
すべての情報がロックされた端末の中にしまわれているとすると、銀行アカウントや、なんらかの契約の控え、様々な金銭の絡む情報もその中にはいってしまっていることも考えられます。どんな契約が存在するかもわからない状態だと、解約手続きには時間がかかるかもしれません。通常、銀行の解約手続きは相続が絡んできますから、死亡届、戸籍謄本、遺族全員の同意書や印鑑証明などを必要としたりしますが、亡くなられた方を前に、そこまで気が回るでしょうか。亡くなられた方が若ければ若いほどそれは心情的にもより難しい作業になるでしょう。
そういう一般的な事を考えつつ、残されたWEB上の足あとを見た時、技術者なら独自ドメイン名を取得していてホームページが残されていたり、whoisに名前が公開されていたり、例えばオープンソースプロジェクトに関わってコミッター、メンテナーとしての活動が残されているかもしれないわけですね。
そういう方の独自ドメイン名を使ったアカウントは遺族の方は保全できるでしょうか。普通に過ごしている中でもドメイン名の更新は忘れがちで手放してしまう事がよくあります。年に一度しか更新する機会がありませんから、習慣として根付かないからでしょう。しかし、ドメイン名は容赦なく期限切れになって、中古ドメイン名としてリセールされてしまうわけです。それは遺族が知らないままに。
中古ドメイン名として手に入れた人は、きっとそこから、様々なメールを受取ります。そしていずれ様々なところにアカウントが作られてあり、権限があることにも気がつくでしょう。
半ば究極のアカウントの母体であるとも言えるドメイン名は、死後の保全を全く保証しません。
銀行なら資産として凍結措置が取られますが、そういう重要な資産とも紐付けられているかもしれないドメイン名は実にうすっぺらい契約で成り立っています。資産でもなく、証書があるわけでもなく、レジストリに所持している間だけ記録されているだけですね。履歴すらありません。
所持、というのも危ういですね。ただの登録です。重要な契約をメールで行える世の中で、メールをすべて合法的に奪われます。そんなことを考えると、独自ドメイン名なんて恐ろしくて取得できないんじゃないでしょうか。いや、独自ドメイン名なんかで、重要なアカウントを作れない。未来永劫とは言わなくても、死後遺族に向けて保証されるなにかがなければ怖くて使えないですね。
そう考えると、重要な契約を持つアカウントにはプロバイダードメインのメールアカウントを利用しようと考えるかもしれません。でもそのメールアドレスが公開されていたとしたら、Twitter などで追悼のメッセージなんか拡散してしまうと、他界したことを知る悪意あるものによって、そのPOPメールアカウントへのパスワードクラッキングが始まるんじゃないか、そんなことをちょっと恐れるのです。
パソコンをめったに使わないような多くの方々にとって、POPメールアカウントに攻撃されるかどうかなんて想像もつきませんし、攻撃が成功してメールが読まれたとしても気がつくわけがないですから、悪意あるものにとっては、リスクが少ない効率のよいターゲットとなるでしょう。
今のドメイン名の管理形態としてのこの問題。今後どんどん深刻な様相を帯びていくと思うのは気のせいですか？
itojun.org は管理されていましたね。他の方々のもつドメイン名、どなたが保全してくれるんでしょうか。
どう思います？
2014/7/31 追記
ネット上に残された「死者」の秘密データ――家族が受け継ぐのか？
http://www.bengo4.com/topics/1851/
うーん。もっと突っ込んでほしいな。
